
Artist's commentary
ドロシーさん嫌悪する
エリート部隊として実戦でMSの経験値を高める日々、ようやくなじんできたクロスボーンガンダムX3は開発でX1フルクロスになったとたんダグザ中尉の手に渡り、自分にはロールアウトしたてのアヘッド・サキガケがまわって来た。またも格闘機である。不規則な生活ゆえプロポーションには万全の注意を払っているが、格闘機体の操縦で筋肉がついていくのはどうしようもない。明らかに二の腕は太くなっている。体重にさほど変化がないのが救いだ。シャワーを終えたドロシーはレセップスで与えられた個室のベッドに身を投げ出す。タンクトップにショーツで寝転がるなど以前なら論外のはしたなさである。地上勤務で初めて味わった砂漠の暑さもさることながら、艦長と副艦長以外が全員女性という女子高環境に慣れてしまったのだ。今では気を張っていつでも正装をしているのはネリィ・オルソンくらいである。パイロットである女性全員に個室を与えたのは艦長のスベロア・ジンネマンの判断だった。艦長は一見野蛮な印象を受ける男だが嫌いではない。彼にしてみれば娘のような歳のパイロットたちを本当の娘のように扱うフシがある。ふとサイドボードの写真に目が行く。自分と並んだカトルが笑顔を向けている。結局手も握れなかった。肩を組んだり、手を腰に回してもらう事もなかった。しかし今は別働隊のカトルは地球に来ている。共同作戦のためにフリーデンという艦でまもなくこちらと合流するのだ。頬が上気する。こんな自分を同じ隊のミューディはバカにするが、彼女とは不思議と仲が良い。『今度会ったら押し倒せ』などと彼女なりの応援をされてしまった。ベッドの上で身もだえする。ほの暗い欲望がドロシーの指を饒舌にする。夢想したことが無いわけではない。みだらな夢の中では彼女は淫魔となり幾度となくカトルを・・・。「あっハッ」その瞬間、いつも切ない涙を流している情けない自分にドロシーは嫌悪する。