
Artist's commentary
陸軍衛生サック「突撃一番」
突撃一番。陸軍における衛生サックの名称である。
外出の際にはオイランハウスでの前後の有無にかかわらず、携帯が義務付けられ、これを使用しない前後は厳禁とされている。
陸軍に納入されている衛生サックは、溶解したバイオ・ゴムの中に木型を入れ、乾いたゴムを手ではがすという完全なハンドメイドであり、ショクニンのワザマエが光る逸品だ。
衛生サックは通常の使用方法以外にも、サヴァイバルにおいては何かと役に立つ。
かの平安時代の文豪軍人、ナツメ・ソースケが水筒代わりにもちいた事は、シチョーシャ=サンも知っておられよう。
陸軍の兵士ならば誰しもが知っているこの突撃一番だが、陸軍にありながらこれの使用法を知らぬ者がいた。
あきつ丸である。突撃一番のことは知っていても、具体的な使い方までは理解していなかったのだ。
憲兵は憲兵本部で憩っていた時に、あきつ丸からこれの使用法を尋ねられ、飲んでいたエナ茶を吹き出しかけた。
その場は無理矢理に話題を変えることで、何とか誤魔化したが、実際何と答えたものかと憲兵は返答に窮していた。
「憲兵=サン、流石に過保護すぎないか?」憲兵の相談を聞き終えたサワタリはそう答えた。
フェアリー・サワタリ。彼女は憲兵の昔からの戦友であり、陸軍船舶部隊に所属する、編笠がトレードマークの妖精だ。
困り果てた憲兵は、狂人だが頭の回るサワタリに知恵を借りに来たのだった。
「しかしサワタリ=サン、あきつ丸=サンに衛生サックはまだ早い。それに知らなかったからといって困る事もあるまい。ブッダだって知らないことはある」
「いや、衛生サックの使い方も知らないようでは、過酷なバンブー・ジャングルを生き延びることは出来ん。ベトコンと深海棲艦は何処から襲ってくるかわからんのだ。憲兵=サンが言いにくいのなら、私があきつ丸=サンに教えてやろう。地獄の如きナムの日々で身につけたとっておきの使い方を!」