
Artist's commentary
NELとネクデカの驚異の蒐集
私は、心霊スポットなどを巡っては雑誌に記事を書くオカルトライター。
昔から怪談が好きで、この仕事にも満足している。だが最近、編集長から「似たような幽霊話ばかり」と苦言を言われてしまった。
確かに色々な心霊スポットには立ち入るが、体験するのは同じような心霊現象ばかり…その場所ごとに“曰く”は違えど、出来上がる記事は似たり寄ったりだった。
「ハッキリ言われると気持ちよくはない…」
読者は新鮮な怪奇を求めている、それは自分も同じだ。そんな悩みを抱える中、気になる話を聞いた。
それはある「蒐集家」の噂で、彼女は様々な怪異譚や不気味な品々をはじめとする、“不思議”や“驚異”を集めているという。話のネタにはなるかもしれない、そんな思いで彼女に会う事にした。
蒐集家の名は「山坂 ノエル」。どこまでも底の無いような黒い目をした女だった。
「私、「袮久田 井手佳杉」と申します。雑誌の取材をさせて頂きたくご挨拶に伺いました」
「へ〜、この雑誌私も読んでるよ、イデカスギ君。最新刊のアレ凄かったねぇツチノコ」
「あっそうすか!?読んでいただいてありがたいですね、ええ。ホンモノなら世界がひっくり返るスクープですよ〜地元の若者が捕まえたんでしたっけね」
「ホンモノだよ。イデカスギ君」
「…ですかねぇ」
「ん、ネクタ君の方が良いのかな?」
「え?あぁお好きにどうぞ。仲間からは「ネクデカ」ってあだ名で呼ばれてます」
「じゃあそうだな、「ネクタイがデカすぎる男」君ってのはどう?」
「これは趣味で名前とは関係無いですぅう!」
「あはは!」
入って、どうぞと招かれた家の中は小さな博物館のようで、至る所に意味のわからない物が置かれている。部屋でアイスティーを出された私は取材に来た仔細を語った。
「ふ〜ん。じゃあさ取引しない?」
「取引ですか?」
「君は怪奇を求めてる、私も同じで色々集めてる。だけど1人じゃ限界もあるのよね、重たい呪物とか運ぶの大変だし、遠出の時も足が欲しいし」
「助手にでもなれって言うんですか?」
「悪くないでしょ?博物館のバイトだけじゃやってけないのよ〜」
「それ拒否権はあるんですかね?」
「そりゃあもちろん、君次第!…でもね。君は私の事、気に入ると思うけどな」
「…自尊心がデカいんですかね?」
「ドキドキしてるでしょう?未知と怪奇を前にして…仕事とか関係無く、君の心の深いトコロがさ」